로그인「——————そういえば、自己紹介がまだだったね! 私は姫柊花音《ひめらぎ かのん》。これからよろしくね!」
カフェ店内のイメージに合わせた落ち着いたBGMを掻き壊すかのように、花音が馬鹿デカい声で自己紹介をする。 てかさっきから思っていたことだが、そんなに大きな声出さなくても聞こえてるから。 「……はぁ」 「君の名前は?」 「俺? 俺は……」 「知ってる。久山雅春《ひさやま まさはる》君、だよね?」 「何で聞いたんだよ。知ってるなら、わざわざ聞くな」 「あちゃー。こりゃ一本取られたな~」 花音はペチッと可愛らしく額を叩く。 こいつ、全然人の話聞かないな……。しかも意味分からんこと言ってるし。 俺のことを何で知っているかは、まあ一々確認するまでもないだろう。 「久山君ってあれでしょ? 嘘告白の人だよね?」 「……お前も、やっぱり人の心とか無いんだな」 「お前も?」 「美しい薔薇にはトゲがあるってことだよ。外面は良い顔して、内面は人のことを傷つけることしか脳のないカスってことだよ」 「うっわ~。辛辣~」 そんなことを言いながらも、花音はケタケタと笑ってる。 笑い要素はなかったと思うんだけど? 「だから、お前のデリカシーの無さにも納得だわ」 「ふぅ~ん? そんなに美人が憎いんだ。てか、やっぱり私って美人なんだ! 私最高! 私最強‼」 胸の前で腕を組んで踏ん反り返っている花音の前に、先ほど注文したオレンジジュースが運ばれてくる。 オレンジジュースはオレンジジュースでも、グラス縁に輪切りオレンジが付いてる高級感あるオレンジジュースだ。 ちなみに、俺はアイスコーヒーを注文した。 「でもさ、でもさ~。美人は美人でもその子と私じゃ全く違うと思うんだよね~」 「なに、美人レベル的な話? 俺からしたら何も変わらないんだけど」 「いやいや、そういう話じゃなくてね。私、これがノーマルだから」 「つまり、今のお前が素ってこと?」 「ダッツライト!」 指をピストルの形にして俺を指さす。 てか、発音が酷すぎてびっくりしたわ。 「……信じられないな。仮に今のお前が素なんだとしたら、かなり残念な子だぞ?」 「ふふふ、そう。私は残念な子なんだよ!」 「うわっ、容認してるタイプの残念な子ってマジでいるんだ。普通ならこうなりたいとか本人の願望とかあるのに……」 「……ちょいちょい私を馬鹿にしてくるのはなんなの?」 「別に、俺はただ客観的事実を口にしたまでだ」 「キャ、キャッカンテキジジツ? ああ、なるほどね! そうね……」 そういうとこなんだよな……。とは口にしなかった。 本当かどうか分からないけど、花音曰くこれが通常運転らしい。 どうしようもない花音の生態に呆れながらアイスコーヒーをストローで啜ると、花音も同じようにオレンジジュースをストローで啜った。 「んで、俺をカフェに連れてきた理由は? 早く帰って寝たいんだけど」 「お! だったら私の膝枕で寝る?」 「はっ倒すぞ」 「いや~ん。久山君ってば、だいた~ん」 話にならなくて席を立とうとしたら、花音が静止を促してきた。 「まあまあ落ち着けって。流石に冗談だってば~」 「落ち着かないといけないのは、お前の方だと思うんだが?」 「それより、私が久山君をカフェに連れてきた理由だっけ? それはね——————」 そう言って、花音は俺に手を差し出す。 「——————私と、友達になろ?」 その言葉を聞いて、俺の背筋に悪寒が走った。 いわゆる、危険信号ってやつだ。俺の本能が警笛を鳴らし続けている。 「……なんで?」 「え? なんでって?」 「なんで俺なんかと友達になりたいんだ? 俺じゃなくても別にいいだろ。それとも俺じゃなきゃいけない理由が他にあるのか?」 自分が最低な事を言っているのは、誰かに指摘されなくても分かっている。 だが、こうでもしないと自分のことを守ることができないのだ。 もう二度と、あんな恥さらしは受けたく—————— 「——————あるよ」 宝石のような透き通る碧眼が俺を見つめている。 その真剣な眼差しに耐え切れず、俺は思わず目を逸らしてしまう。 「目、逸らしたね。そういうところが私とよく似てる。だから友達になれると思うんだ」 「意味分かんねぇ。そういうところって、具体的にどういうところだよ」 「んー。まあ、簡単に言うと人と目を合わせられないところかな」 「は? お前、何言って……」 「ごめん、席外すね」 そう言い残して、花音は荷物を持って店の外に出て行ってしまった。 これ、ここの代金は俺が払っておけってこと? 「……俺とお前が似てるわけないだろ。クソ女」 一人取り残された俺は、飲み物代を精算して店を後にした。翌朝、登校して自分の席に突っ伏していると背中をツンツンされた。 いや、ツンツンされたような気がする。多分気のせいだ、そうに違いない。 「とうっ!」 威勢の良い声を共に右脇を思い切り突かれた。 「うひゃっ!?」 突然奇声を上げたせいで、注目が一気に俺に集中する。 嘘告白の件で変に目立っているのに、これ以上の悪目立ちはしたくないんだけど。 原因は右隣にいる金髪美少女のせいだ。てか、本当にクラスメイトだったんだ……。 「こら、マサくん! なんで昨日は私を置いて帰っちゃったのさ~」 「いやいや、お前が先に帰ったんじゃん。この食い逃げ女」 「いやいやいや! 女の子が荷物を持って席を立ったら化粧直し以外にないでしょ! 言いがかりはやめて欲しいなー」 「そんな世界線を俺は知らない」 「残念だけど、これが現実なんだよなー」 「さいですか」 それだけ言い残して、俺は再び机に突っ伏す。 「こらこらこら、私を無視して眠りにつこうなんて失礼じゃありませんかね?」 「……」 「公衆の面前で抱きついちゃうぞ?」 「マジでやめろ。てか早く席つけよ」 「ほいほ~い」 はぁ、ようやくうるさいのがいなくなった。 そう思った矢先、後ろからツンツンされる。 確か、彼女の名前は姫柊花音《ひめらぎ かのん》。そして俺の名前は久山雅春《ひさやま まさはる》。 嫌な予感がするので、俺は決して後ろを振り返らないことにした。 すると今度は、俺の背中に何やら文字を書き始めた。考えたくもないのに、神経が無意識に背中に集中する。 こ、っ、ち、み、な、い、と、さ、す、よ、♡ 思わず俺はその場で飛び跳ねた。 クスクスと後ろから笑い声が聞こえてくるので振り返ると、そこにはイタズラな表情を浮かべた花音の姿が。 その手には、しっかりとシャーペンが備えられている。 「お前、一体何がしたいんだよ……」 「ん~? 私はマサ君と友達になりたいだけだよ?」 「……」 「どした、急に真剣な顔して。正直キモいぞ」 「思っても口に出すな。それより、さっきから気になってたんだけど、なんでマサくん呼び?」 「やっぱり友達なら名前呼びかなーって!」 「マサくんって名前呼びじゃなくて愛称呼びだけどな」 「あ、ほん
「——————そういえば、自己紹介がまだだったね! 私は姫柊花音《ひめらぎ かのん》。これからよろしくね!」 カフェ店内のイメージに合わせた落ち着いたBGMを掻き壊すかのように、花音が馬鹿デカい声で自己紹介をする。 てかさっきから思っていたことだが、そんなに大きな声出さなくても聞こえてるから。 「……はぁ」 「君の名前は?」 「俺? 俺は……」 「知ってる。久山雅春《ひさやま まさはる》君、だよね?」 「何で聞いたんだよ。知ってるなら、わざわざ聞くな」 「あちゃー。こりゃ一本取られたな~」 花音はペチッと可愛らしく額を叩く。 こいつ、全然人の話聞かないな……。しかも意味分からんこと言ってるし。 俺のことを何で知っているかは、まあ一々確認するまでもないだろう。 「久山君ってあれでしょ? 嘘告白の人だよね?」 「……お前も、やっぱり人の心とか無いんだな」 「お前も?」 「美しい薔薇にはトゲがあるってことだよ。外面は良い顔して、内面は人のことを傷つけることしか脳のないカスってことだよ」 「うっわ~。辛辣~」 そんなことを言いながらも、花音はケタケタと笑ってる。 笑い要素はなかったと思うんだけど? 「だから、お前のデリカシーの無さにも納得だわ」 「ふぅ~ん? そんなに美人が憎いんだ。てか、やっぱり私って美人なんだ! 私最高! 私最強‼」 胸の前で腕を組んで踏ん反り返っている花音の前に、先ほど注文したオレンジジュースが運ばれてくる。 オレンジジュースはオレンジジュースでも、グラス縁に輪切りオレンジが付いてる高級感あるオレンジジュースだ。 ちなみに、俺はアイスコーヒーを注文した。 「でもさ、でもさ~。美人は美人でもその子と私じゃ全く違うと思うんだよね~」 「なに、美人レベル的な話? 俺からしたら何も変わらないんだけど」 「いやいや、そういう話じゃなくてね。私、これがノーマルだから」 「つまり、今のお前が素ってこと?」 「ダッツライト!」 指をピストルの形にして俺を指さす。 てか、発音が酷すぎてびっくりしたわ。 「……信じられないな。仮に今のお前が素なんだとしたら、かなり残念な子だぞ?」 「ふふふ、そう。私は残念な子なんだよ!」 「うわっ、容認してるタイプの残念な子ってマジでいるんだ。普通ならこうな
「ごめん、これ全部罰ゲームでやったことなんだ」 クラスのマドンナだった女子生徒が口を開いたと同時に、植え込みの方からスマホを構えた女子生徒二人がケタケタと笑いながら姿を現した。 周りの音は遠いのに、笑い声だけが鮮明に聞こえる。 手は小刻みに震え、全身の体温がスッと抜けていくのを感じる。 そこで俺——————久山雅春《ひさやま まさはる》はようやく理解した。 やられた。 これ、嘘告白だったんだ、と。 緊張のあまり声が上手く出せず、上ずった声音になりながらも相手の告白に返事をしているところをマドンナの友人たちにバッチリ録画されており、しかもそれを面白半分にSNSにアップされる始末だ。 【拡散希望】 嘘告白に引っかかった童貞www マジうけるwww #卒業式 #黒歴史 #美女と野獣 もちろん彼女たちの行動を非難する声も上がっていたが、その頃には全てがもう手遅れ。 インターネットの大海に動画が公開されれば、完全に根源を絶ち切るのはハッキリ言って難しいだろう。 だからこそ、高校入学初日から俺のことを知らない人は数少なかった。不名誉な意味で。 「あの人、嘘告白の人でしょ?」 「それ知ってる! どうして嘘告白だって気が付かなかったのかな……」 「まあ、あんなに可愛い子に告白されたら……ねぇ?」 「でも、アイツそこまでイケメンって訳でもなくね? 普通疑うと思うけどな」 「それな、ハニートラップにかかったアイツも悪いよな」 新しい門出だというのに、登校初日から気分は最悪……と言いたいところだけど、全てがどうでもよかった。 だって、所詮は他人。他人なんて心底どうでもいいからな。 でも良かったね、新しく友達ができて。まあ、そもそも前の学校からの繋がりかもしれないけど。 それから時はゆっくりと流れていき、ようやく下校の時刻になった時には俺の気力は0に等しかった。 寝みぃ、さっさと帰りてぇ……。 下校の予鈴と共に、俺は颯爽と家に帰ろうとしたのだが、それを阻むかのように生活指導の先生に呼び止められた。 呼び止められた理由は何となく察した。 「ここで話す内容でもないしな。とりあえず場所を変えようか」 そして俺は、生活指導室に案内された。 「まあ、とりあえず座りなさい」 「失礼